wonder PHOTO POJECT

 

wonder「ボクの左側」

it was "dramatic every day".
 
  

scene#01 珈琲色の瞳

あの頃のボクたち。
彼女にとっては「何気ない日常」。
でも、ボクにとっては「劇的な毎日」だった。
 
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書店と併設されているシアトル系カフェ。ボクら二人はいつもここで待ち合わせする。一時間前にボクがここに来て、彼女は一時間遅刻して来る。これが、ボクと彼女のデートのスタンダード。そして、今日もいつも通り一番安いブレンドコーヒーを飲みながら文庫本を開いて、ボクは彼女が来るのを待った。
 
二杯目のコーヒーに口をつけ始めたとき、彼女はボクが座るテーブルに姿をあらわした。待ち合わせに遅れてきた彼女は席にすわることなく、ボクの前に立ち
 
「今日も寒いね。手が冷たくなっちゃったよ」
 
と、小さな手を差し出す。
ボクは文庫本をテーブルの上に置き、彼女の手をそっと握った。
 
「うん。ほんとだ、冷たいね。」
 
相席に座るように促すボクの手を握り返し、
そうでしょ?と、ニコリと笑い、
 
「私も何か飲んでもいいかな?」
 
と、ボクの返事を待つことなく注文レジへと向かって行った。それを目で追うと、ふと彼女は立ち止まり、くるっと振り向き、笑顔で手を振る。その無邪気な様は、まるで母親におつかいを頼まれて張り切る子供だ。
 
「ほら、ここ。この部分が美味しいんだよ。」
 
チーズケーキのクランブルをフォークでつつきながら、ボクに得意気に教える彼女。ボクはただ彼女の話に耳を傾けながらコーヒーカップに口付ける。デザートを食べ終わった彼女は、しばらくするとおしゃべりを止めた。
 
「ねえ・・・あなたの瞳が茶色いのはコーヒーが好きだから?」
 
うつむいていたボクは、ハッとして顔を見上げた。
すると、今度はボクの顔を見て意味あり気に笑い
 
「あなたの瞳が茶色いのはコーヒーが好きだから?」
 
と、彼女はまた同じことを口にする。
 
「何それ?」
 
ボクは冷めた残りの珈琲を飲み干してカップを雑にテーブルに置く。その音に反応して彼女は厳しい顔つきへ一変する。そして、彼女はボクの手を取り店を出た。

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